姑獲鳥の夏/京極夏彦 600ページ越え、無駄のない濃密な読書体験

読書記録

おすすめレベル

驚きレベル:★★★★★

のめり込みレベル:★★★★

ハードルの高さ:★★★★

こんな人におすすめ

  • あらすじを読んで興味があったものの、ボリューム的に不安で読んでいない方
  • 緻密なロジックが好きな方
  • 舞台が昭和27年の戦後。その年代が好きな方

Kindle版もありますが、紙の方が戻って確認がしやすいので読みやすいと思いました。

あらすじ

産婦人科、久遠寺医院の院長の娘・梗子が20ヶ月も身籠もったままで、彼女の夫・牧朗は1年半前に密室から失踪したという噂が流れていた。

事件を取材することになった小説家・関口は、友人の古書店主・京極堂(中禅寺秋彦)に相談を持ちかける。

他の友人の私立探偵・榎木津や武骨な刑事・木場なども登場し意外な方向に話が進んでいきー

百鬼夜行シリーズの第一弾。京極夏彦先生の作品のデビュー作

読書背景

現在開催されている講談社文庫のミステリーフェアの対象本だったことがきっかけ。

京極先生の作品を読むのは初めて。

いつか読んでみたいと思いつつ、そのボリューム感(600ページ越え)に圧倒され、これまでてが伸びていませんでした。

タイトルに「夏」と入っているので、夏と言える期間に読まねばと思い速攻読みはじめました。

裏切られた

2つの意味で良い意味で、裏切られています。

1つはなんとなくのイメージ、2つめは話の結末に。

表紙の印象とタイトルの怖そうな雰囲気から、読み始める前はホラーテイストの強いミステリーと思っていました。

読み始めると、ロジックで霊などのホラー要素を否定。

「じゃあこの話はどうなるの?」という疑問が。

最初の100ページは、ロジックな説明が続きます。

私は脳の構造について別の本で読んでざっくりしていたのと、そういう話自体が好きなので苦じゃないです。

苦手な人は、冒頭で「合わない」と感じるかもしれないけど、ここの理解が後半に効いてきます。

冒頭部分を含めた、伏線の回収が丁寧です。

600ページあれば蛇足と言える箇所があるものと思っていましたが、この本は全て計算ずくの緻密な内容。

ミステリーなのである程度読みながら推理しているわけですが、私が推理していたところはあっていてもほんのひと握り。

自分の推理ではなんだか違和感のあったところの真相がわかった時の驚き

後半は一気にのめり込みました。

この本の中にキーワードとして出てくる、自分が見ている世界が脳によって作られた世界であること。

今見ていることも実は嘘なのかもしれないと思うと、なんとも不思議な感覚。

読み終わったあとは放心してしまいました。

これが天才

京極先生は本作がデビュー作とのことで、天才というのはここまで突き抜けているのだなと。

文庫など様々な版がありますが、それぞれで一行が別ページにならないように文章を修正しているとのこと。

確かにありがたいですが、600ページに対して、その修正を行うこだわりへの力がすごい。

天才の圧倒的な力を見せつけられて、気持ちがいい。

魍魎の匣も読まねば。

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