読書背景
自分から手に取った作品ではないです。
ひょんなことから舞い降りてきた感覚の出会いの本です。
初めましての本に出会えてよかった。
あらすじ
7年前、25歳で死んでしまった一樹。
残された嫁テツコ、一樹の父ギフは共に暮らしている。
さまざまな人物の視点で2人が一樹の死を受け入れていく過程を描いた作品。
こんな人におすすめ
- 日常の話が好きな方
- 変化することが怖いと思っている方
- 優しい気持ちになりたい方
視覚的な描写
描かれるモチーフ食べ物、お茶碗、家など、暮らしの姿が視覚的に浮かびました。
特に、すごく特別な表現がある訳ではないけれども、食べ物が美味しそう。
私にとっては視覚的な映像が浮かぶ、ドラマみたいな小説。
やっぱり脚本家さんの作品だからかな。(ドラマも見てみたい)
さまざまな視点
メインの人物であるテツコとギフはもちろん、幼馴染や親戚、一樹自身の視点の話も。
それぞれの登場人物を理解してから前の話に遡ると人間の多面性が垣間見れる。
私が色々な人に色々な表情、感情、話をするように、誰に対しても同じ人物などいないわけで。
それが人間が面白いところなんですよね。
ついつい忘れてしまうな。
登場人物について理解ができてくる、後半の方がより深く楽しめた。
ちなみに視点によって文章自体も個性的で、楽しい。
主人公の2人、テツコとギフ
テツコについてはあまり理解ができなかったかも。
というのが、テツコの感情についてはすごく多くを語れらないから。
特に、現在の彼氏の岩井さんに対しての言動が、私とは違う行動原理なんだろうな、描写がないとわからない。
そして、ギフ。今の姿が理想です。
いわゆる好々爺だと思いますが、パチンコにハマったりと人間らしいなぁ。
きっと今はすっかり落ち着いた人に昔のことを聞いたら、言えない過去もあるのだろうな。
家族の形としては義父と一緒に住み続けるのは変わっている部類なんでしょうが、尊重しながら入れる関係はどういう血縁関係でも理想。
変わっていくこと
同じだなと思っているものでも、変化はする。
自分は同じだったとしても周囲は変化するわけで変化せざるを得ない場面もある。
変化すること自体を受け入れることの準備ができる作品。
私は変化することが苦手で現状維持でOKなタイプです。
でも、否応なしに変化求められているし、自然と価値観も変わっていったので結局今を楽しむしかないんだよね。
そんな気づきがじわじわと自分の中に染み込んでくれました。
大事な人がいなくなっても人生は続く
死について描いていますが、シリアスさというのはなくゆるゆるとした雰囲気。
日常のゆるゆる感と、一樹がいないことによる喪失感。
アンバランスな状態。
目の前の人が笑顔だからといって全てが幸せな訳ではないんですよね。
つい忘れてしまうけども。
一樹の死から少しずつ氷が溶けるように、受け入れていけてよかった。
大事な人をなくしてしまった人にはとても刺さるところがありそう。
「悲しみの秘義」が好きな人は好きそうだし、この本がはまる方にはぜひ読んでみて欲しいです。
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